町おこし・インバウンド

日本人の90%は知らない外国人に宗教を伝える方法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

9割の日本人が知らない訪日旅行者に対する宗教の伝え方

1、お寺や神社のガイド事情

訪日旅行者(特に欧米人)に日本の魅力を尋ねると
90%近い人が伝統文化と答えています。

2000年代になってから、パワースポットが流行りだして
日本人も寺社を見て回ることが多くなったと思います。

あなたも神社やお寺を訪れたとき
外国人観光客を見かけたことがあるのではないでしょうか。

私もよく寺社を訪れますが、
どこへ行っても必ず外国人観光客を見かけます。

ただ、訪日観光に関わる仕事をしている者として
ひとつだけ懸念することがあります。

それは、宗教に関するガイドが不明瞭であるということです。

訪日旅行者に日本の宗教をしっかり説明できる人はどのくらいいるでしょうか?

通訳案内士でも宗教のコアな部分まで知っている人は少ないと私は思います。
果たして、宗教はどこまで理解すれば良いのか?
訪日旅行者にどのように伝えれば良いのか?
その辺りを考察していきましょう。

2、外国人に仏教を伝える

はじめに、宗教に対する理解ですが、
何事も完璧な知識を得ることは専門家でも困難です。

ですから、ここまで覚えれば良いという
ボーダーラインを引くことは不可能でしょう。

でも、このくらい知っていると
外国人観光客の質問に焦らず答えられるという範囲はあります。

まずは仏教の歴史について解説します。

仏教の起源はインドですが、日本の仏教は中国経由ですから
オリジナルと異なる部分が多々見受けられます。

例えば、2500年前に釈迦が悟ったことは、
全てのものは空でありこの世もあの世もないという論理です。

でも日本の仏教文化では死後の世界、
つまり魂が浄土を経て涅槃に辿り着くまでの話があります。

だからこそ、お葬式の後に僧侶から戒名を頂き
お墓を建てて祖先を崇拝するのです。

しかも日本の仏教には、
浄土宗・浄土真宗・天台宗・曹洞宗・臨済宗・日蓮宗・・・と
様々な宗派があり、それぞれ教義が異なります。

東京では浅草寺が外国人観光客で賑わっていますが、
彼(彼女)らに仏教の案内をするのに浅草寺だけでは不十分なのです。

3、日本人の信仰事情

次に現代の信仰についてですが、
大半の日本人は無宗教でありながら、
習慣的に宗教に関わっています。

特に神社は「八百万の神」を崇拝する自然崇拝や精霊崇拝とする
古神道を起点としています。

初詣で寺社を訪れ新年の願掛けをしたり、
毎年決まった日にちに祭りを楽しんだりするのは
その行事のひとつだからです。

また冒頭で述べたように、寺社は良縁・健康・開運といった
何か良いことが起こりそうと感じさせるパワースポットとしても話題になっています。

科学的には全く根拠のないものと知っていても
私たち日本人はこうした場所を訪れてその歴史や文化に触れ合い
宗教への信仰を深めています。

この決まった神を信心せず行事によって信仰を深めるという
矛盾した行動を訪日旅行者に説明するのは至難の技ですが、
こうした日本人の感覚に触れてもらうことで訪日旅行者の理解が得られるのです。

4、寺社を異なる視点でみる

他にも建築といった分野からも宗教を語ることができます。

寺院には、俗世界と仏世界を隔てる山門、本堂、鐘をつく鐘楼、
集会や読経の場である講堂、経典を納める経蔵、
僧侶が寝起きする生活の場である僧坊などがあります。

これらは寺院によって歴史的な由来や美術的な魅力があります。

日本で最初に世界文化遺産に指定された
奈良の法隆寺を例に挙げてみましょう。

法隆寺にはパリのルーブル美術館でも展示されたことがある百済観音や
面積の大きなお寺ではおなじみの五重塔など
38個の国宝と153個の重要文化財があります。

観光地の滞在時間は一般的に2時間と言われますが、
その2時間を濃密で記憶に残る体験とさせるには、
より詳細な情報を与えることが必要なのです。

このように、仏教・信仰・建築という3つの話題を持ち出し、
その歴史から現代に至るまでのストーリーを伝えることで
訪日旅行者は日本の宗教に対して十分な理解を得られるのです。

もし、それでも説明が足りないという外国人観光客がいたら、
それは本気で日本に移住を考えている人か宗教学の専門家くらいです。
そういう人たちには出家を勧めるといったジョークを交えながら
日本人の専門家を紹介してあげましょう。

あなたの宗教に対する知識とその伝え方が訪日旅行者を虜にするのです。

コメントを残す

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください